決算書の中で、いちばん正直なのはどれだろうか。
P/Lは1年間の成績表、B/Sはある時点を切り取った健康診断表。
では、C/F(キャッシュフロー計算書) は何か
「会社のお財布の中身の動き」**を映し出した、ごまかしがきかない“1年間のお金の流れ”
今回は、性格のまったく違う3社のC/Fでお金の流れを見ながら、
C/Fの読み方を整理してみたい。
C/Fの基本は3つ
まず、基本の3要素を「個人の家計」に例えて理解しましょう。
この3つを見るだけで、
その会社が 「今どんな状態か」 がわかる
- 営業CF:本業で稼いだお金(給料)
- 投資CF:将来への種まき(貯金崩して株を買う、設備投資)
- 財務CF:お金の貸し借り(ローンを組む、借金返済)
1. オリエンタルランド:夢の国を維持するための「勝負の投資」

2022年3月期(単位:百万円)
- 営業CF:+54,602
- 投資CF:-138,984
- 財務CF:+48,933
2022年といえば、コロナ禍の影響がまだ残っていた時期。それなのに、投資CFが**1,300億円以上のマイナス(=超積極投資)**になっています。
【考察】
本業(営業CF)で546億円稼ぎつつ、足りない分は銀行などから調達(財務CF)してまで、巨額の投資を敢行した。これは、ディズニーシーの「ファンタジースプリングス」などの新エリア建設に突き進んでいた時期。
**「今が苦しくても、未来のゲストの笑顔(と収益)のためにフルスイングする」**という、ディズニーの強い意志が伝わる数字。
2. ワタミ:生き残りをかけた「背水の陣」

2016年3月期(単位:百万円)
- 営業CF:+2,598
- 投資CF:+19,130
- 財務CF:-12,117
通常、投資CFはマイナス(=何かを買う)になるのが健全ですが、ワタミはプラスになっています。これは一体どういうことか?
【考察】
投資CFがプラスということは、**「持っている資産(店や介護事業など)を売ってお金を作った」ということです。
この時期のワタミは、過労死問題から業績が悪化していた厳しい状況。
主力だった介護事業を売却し、そのお金で借金を返済(財務CFがマイナス)していた。本業の稼ぎだけでは足りない分を、身を削って捻出した形です。まさに「家のお宝を売って、借金を返しながら立て直しを図る」**という、必死の構造改革が読み取れます。
当時、自己資本比率は7%とかなり厳しい状況から事業売却によって30%ほど回復しました。
3. タイミー:急成長中のベンチャー「先行投資モード」

2023年10月期(単位:百万円)
- 営業CF:-749
- 投資CF:-541
- 財務CF:+5,306
最後は、スキマバイトアプリのタイミー。注目は、本業の営業CFがマイナスである点です。
【考察】
「赤字なの?」と不安になるかもしれませんが、成長著しいベンチャーにはよくある形です。本業でまだ現金が出ていく状態(広告宣伝やシステム開発に巨額投入)ですが、その分、投資家や銀行から期待を込めてドカンと借金(財務CFがプラス53億)しています。
**「今は手元のお金が減ってもいい、市場をごっそり獲りに行くぞ!」**という、若々しくエネルギッシュな攻めの姿勢がわかります。
3社のまとめ
| 会社 | C/Fのパターン | 状態を一言で言うと? |
| オリエンタルランド | 稼いで、さらに借りて、大きく投資 | 未来への巨額投資家 |
| ワタミ | 資産を売って、借金を返す | 身を削る再建ランナー |
| タイミー | 借りたお金で、一気に市場を攻める | 野心溢れる若手起業家 |
C/Fを見ると、「この会社は今、守りなのか攻めなのか?」が手に取るようにわかる。
投資家がC/Fで見るべきこと
最後に、長期投資家としては、C/Fを以下のような観点で見ておくことをおすすめする。
- 営業CFがプラスか?
- 投資CFは戦略的にしているか?(未来のために種まきをしているか)
- 財務CFに依存しすぎていないか?
いくら利益が出ていても、キャッシュが尽きれば会社は終わる。
P/Lを重視されがちであるものの、C/Fも重要な財務諸表の1つ